「prayer」CD評

●世界の音楽情報誌『ラティーナ』2012年9月号((株)ラティーナ)

作曲とピアノの shezoo のプロジェクト Trinite による初録音。『月の歴史』『神々の骨』更にその後へと続く由だが、リニアな物語ではなく、重層的螺旋的な提示。一定の舞台の上での劇的展開というよりは、その都度自ら空間を生み出しながら、その内外に展開される韻文と散文の融合体。誤解を恐れずに言えばコンピュータ・ゲーム(ゲーム音楽ではないよ)が一番近いか。この音楽は世界の根底をゆさぶることを当初から意図しているからだ。童謡につながる懐かさで誘いこまれた聴き手はユーモアの海にほうり出される。壷井彰久、小森慶子、岡部洋一という組み合わせは理想的。最も優れているというよりも、最もうまくはまっているという意味で。緻密な作曲には、各自が伸びのびとうたえるための配慮もあるにちがいない。分類不能で底しれず豊饒なこの音楽は、見当がつかないといって敬遠する者に聴く資格はない。(おおしまゆたか)
http://www.latina.co.jp/

●『CDジャーナル』2012年9月号((株)音楽出版社)

作曲家/ピアニストの shezoo(シズ)を中心に壷井彰久(vl)、小森慶子(cl)、岡部洋一(perc)という猛者が集ったアコースティック・クァルテット Trinite(トリニテ)のデビュー作『prayer』は、架空のヨーロッパ映画のサウンドを思わせる妖しい室内楽集。19世紀的黄泉の濃厚な香りに包まれた端正かつメランコリックな楽曲は、しかし同時に南米的破調と熱狂を孕んでおり、その表情を刻々とドラマティックに変化させていく。(松山晋也)
http://www.cdjournal.com/